昭和30年代ぐらいまでは、ほとんどの銭湯で燃料に薪やおがくず(ひっこ)、石炭などを使用していましたが、現在では重油や廃油が主流となっています。一番の理由として重油の場合、手間が掛からないという点がありますが、国内の林業が衰退し製材屑が入手難になったことも一因として考えられます。 平成15年に行われた京都府の調査に依れば、廃材利用の浴場は全体の10.1%。この数字は年々減っている状況です。ちなみに重油と廃油利用を合わせた数字は91.5%となっています。(重複回答している浴場があると思われます) 堅苦しいイントロはこのあたりまでにしまして・・・「薪で焚いたお湯はやわらかい」とよく言われますが、みなさんは実感されたことがあるでしょうか。白状しますと私自身は、おそらくきき湯をしても判りません。銭湯の脇に廃材が積まれていると、「おっ、ここは薪だな」と分かるので柔らかいような気もしますが、ビールと一緒でラベルを見て「やっぱりエビスだな」と言っているようなものです。ただ熱いお湯の場合、肌にチクチクする感覚が薪で焚いたお湯は少ないような感じはします(気のせいか?)。 自分の感覚が鈍い話はさておき、ちょっと薪焚きの裏側を見たいと思い、現在でも普段は薪だけで焚いておられる西陣の京極湯さんで、薪の整理や釜焚きの様子を見学させていただきました。(まささんがいつも手伝っているというので、それに加わらせてもらいました) 京極湯さんの場合、週1回家屋解体業者さんに、柱ものを中心に2tトラックで廃材を京極湯まで届けてもらっています。いつも隣風呂の長者湯さんが軽トラで手伝いに来られ、廃材は分けて使用されています。 さて、廃材が届いたのはいいものの、ここからが大変。チェーンソーで1mほどに切りそろえ釜の近くなどに積み上げる作業に4〜5時間を要します。この間にも合間を見ながら釜の方にも火を入れ、開店準備もしなければいけないわけです。見学させて頂いたのは10月の初旬。季節により釜に廃材を入れる量も変わるのですが、この時期で約1時間に1回廃材をくべなければいけないとのことでした。これが冬場だと30〜40分に1回になるそうです。 休憩をはさみながら、最終的に掃除まで終わったのは5時過ぎのこと。しか〜し、お手伝いでたっぷりと汗を流し、自分でも少しだけ廃材をくべて焚いたお湯は、心底気持ちよかったのでありました。 薪で焚いたお湯の心地よさを感じに、みなさんも行ってみましょう。
↑2t車1台分の廃材が駐車場に下ろされたところ。
↑はじめてから約1.5時間経過。廃材の山がなかなか減りません。
↑隣風呂の長者湯さんも加わってひたすら切る、積む、切る、積む。この日長者湯さん2往復。
↑京極湯さんの釜。重油でも廃材でも焚ける併用釜です。奥行きは約2.7mもあります。上の扉の中には熱効率を高めるため円筒形の空洞がいくつもあります。
↑廃材を入れるとこのような感じに。風呂が沸くのに約2時間半程。余裕を持って昼前には焚き始められます。一日焚いても灰は、洗面器1杯ほどなのだとか。
↑右奥に見えるのが京極湯名物レンガ積みの煙突。左側のバルブはカランやシャワー用に温度調節したお湯を供給するためのもの。紙袋の右側が釜です。
西陣周辺
京極湯
長者湯
笠の湯
松葉湯
大宮温泉
二条駅〜壬生周辺
五色湯
丹波口駅〜梅小路周辺
稲住湯
嵐電沿線(北野線)
栄湯
瑞喜湯
嵐電沿線(嵐山本線)
旭湯
寿温泉
鹿王湯
修学院〜一乗寺周辺
雲母湯
大黒湯
宮の湯
三十三間堂周辺
錦生湯
新有馬湯
京都府下
旭湯(園部町)
一の湯(綾部市)
竹の湯*(綾部市)
橋本湯(八幡市)
*竹の湯は「お風呂屋さん的京都案内」で未紹介です。
*上記リストは、まささんの実地調査、当サイト管理人の実地調査ほかを基に作成しました。抜けているところがあると思われます。調査当時のデータで現在も薪を使用されているとは限りません。また油と併用の浴場も含まれています。
(2005.10.21追記)