第1回:人間洗濯機でくるくるしよう
最近のお風呂屋さんには、ジェット(超音波)風呂や泡風呂はあたりまえ。サウナや露天風呂まで備えているところもありますが、そんな中で「人間洗濯機」は存在感のある設備ではないかと思います。
円形の浴槽の中で水流がくるくる回っているこの「人間洗濯機」。オイルショック後の昭和50年頃、毎年のように繰り返される料金の値上げや、内風呂の普及で減ったお客さんを取り戻そうと、お風呂屋さん業界は泡風呂や超音波風呂、サウナなどの、俗にイロモノと呼ばれる設備に一斉に力を入れるようになります。「人間洗濯機」が、最も元気だったのもこの時期でしょう。
当時私は小学生。私の通っていた小学校近くのお風呂屋さんに「人間洗濯機」があり、銭湯通いをしている友達が、その楽しさについて語っているのを覚えていて、「人間洗濯機」という言葉に妙に郷愁を感じてしまうのです。
私の個人的な思い入れはあるにせよ、ただならぬ魅力を感じる「人間洗濯機」。一冊の本から昭和45年に開かれた大阪万博のサンヨー館に出展されていたことを知りました。40代以上の方なら、もしかして記憶に残っているかもしれません。
この万博のサンヨー館に出ていた「人間洗濯機」は、お風呂屋さんにある「人間洗濯機」とは全く別物なのですが、日曜研究家串間努氏の著書「まぼろし万国博覧会」(小学館発行)を読むと、「風呂の未来像を想定したもので、超音波や赤外線を駆使して医療美容効果も加えて入浴を楽しむ」ものだったそうです。形は流線型で、体をすっぽり納める玉子を想像してもらえれば、比較的近いでしょうか。
一部透明で中が見えるようになったこのお風呂に、コンパニオンがビキニを着て、みんなが見ている前で実演していたというのですから驚きですが、三洋電機のホームページを見ると、後に介護用の風呂に技術が活かされたとあるので、まんざら見せ物としてだけの出展という訳ではなかったようです。
話はだいぶ逸れてしまいましたが、「人間洗濯機」をこよなく愛する者にとっては、重要且つ避けて通れない話題です。万博の人間洗濯機が、日本人に「人間洗濯機」の名前を刷り込んだと行っても過言ではないような気がします。さらに調べると、この万博型の「人間洗濯機」は、現在エステサロンでサウナ装置なども装備し、痩身用に進化して活躍しているようです。
前置きが長くなりましたが、とにかく一度体験してみましょう。現在京都市内で「人間洗濯機」が活躍しているお風呂屋さんは、わずかに4軒。貴重な存在です。それだけに、体験してみる価値も高いのです。
人間洗濯機の水流に身を任せ、浴槽内をくるくる回れば、心の疲れもすっきりと洗濯してくれるはずです。さあ、みんなでくるくるしてみましょう。
「人間洗濯機でくるくるしよう」を書いてから1年と数ヶ月。'70の万博サンヨー館に展示されていた人間洗濯機が、大阪府守口市の三洋電機本社に併設された「SANYO
MUSEUM」に展示されていると知り見に行ってきました。場所は京阪電車の守口市駅から徒歩5分ほどのところ。非常に便利な場所です。
ちょうど行ったときは特別展として大阪万博「サンヨー館の思い出」展(2005年9月30日まで)が開催中で、当時の映像やポスター、グッズなども展示されていました。
さて、思い入れのある人間洗濯機です。感動的な出会いが期待されますが、なんとミュージアムに向かう途中のガラス越しに見えてしまいました(笑)。もしやと思い、正面にまわり玄関から入るとやはり見えていたのは万博で展示されていた人間洗濯機でした。正確には「ウルトラソニック・バス」という名称だったらしいのですが、当時も「人間洗濯機」の方がはるかに通りがよかったようです。
しかしよく見ると滑稽な形をしています。現在は取り外されて展示されていませんでしたが、当時の映像を見るとテニスの審判椅子というか、ミニタラップのような梯子が掛けられ、デモンストレーションをする女性はその梯子を登って入浴しています。実用性は全く無視ですね(笑)。また映像にはない煙突のようなものが左右に取り付けられています。これはなんなんでしょう? 一説によると、万博終了後引き取った方がおられ、実際に使用されていたという話があるのですが、その際に取り付けられたものなんでしょうか? 謎は深まるばかりです。
しかし実際に間近でみるといろいろな発見もありました。背中と足先の壁には無数のジェット吹き出し口が付いているのが分かりましたし、体を入れたあとに首の前の所はサンルーフの様に閉まる構造もよく分かりました。百聞は一見にしかずですね。欲を言えば動いているところが見たい! もっと言えば入ってみたい! サンヨーさんどうでしょう?
(画像は三洋電機さんに了解を得て掲載しています)
(2005.8.19追記)
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←煙突みたいなの分かります?
↓かなり強力にジェットが出てきそうです。
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↑見えてしまった・・・。
→結構しっかりした椅子が付いています。
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一乗寺〜修学院周辺
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里の湯
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やや楕円の浴槽。ネオン付。4軒の中で最も水流が早いと思われる。確実に体が回ります。
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河原町・四条周辺
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桜湯
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泡風呂装置付き。浴槽が大きくダイナミックに楽しめます。
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八条口〜十条周辺
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九重湯
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泡風呂装置・ネオン付き。手洗いのような、やさしい水流に包まれましょう。
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伏見稲荷〜藤森周辺
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宝湯
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泡風呂装置付き。洋風建築の建物と共に楽しみましょう。唯一「人間洗濯機」の表記があります。
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*長岡京市の天神湯にもあります。ただし水流が弱く、注意しなければ回っていると気付きません。
*現在は回っていない元人間洗濯機の円形浴槽は結構残っており、井筒湯、西山温泉、長岡温泉などに見られます。
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書名等
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著者等
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出版社
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発行年
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まぼろし万国博覧会
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串間努
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小学館
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1998
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Meets Regional
2004.1月号
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特集「街の湯」
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京阪神
エルマガジン社
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2004
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三洋電機株式会社HP
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洗濯機事業50年の歩みで、万博に出展された「人間洗濯機」の写真が見られます。
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やしろ湯HP
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ジェット風呂の説明のところで「なれないお年よりや子供は、浴槽に入る時、足元をすくわれて、ぐるぐる回っていました。」と書かれています。
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(2004.5.8)
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