お風呂よもやま話 特別編
第三回世界水フォーラム分科会レポート

日本における公衆浴場文化とその再生

平成15年3月22日(土) 国立京都国際会館ルームC-1  12:30〜15:30
主催:京都府

1,京都府副知事挨拶

2,基調講演「公衆浴場と日本文化」

  金坂 清則

京都大学大学院
人間環境学研究科教授

3,パネルディスカッション
       「公衆浴場の良さを見直そう」

 <コーディネーター>

  金坂 清則

京都大学大学院
人間環境学研究科教授

 <パネラー>

  鵜飼 正樹

京都文教大学人間学部助教授

  大場  修

京都府立大学人間環境学部教授

  小中 晃司

京都府公衆浴場生活衛生同業組合
理事長

  町田  忍

庶民文化研究所所長

 クリストファー・
  ムンジオリ

京都府立北桑田高校英語指導助手

         


 京都府副知事の挨拶に続き金坂教授の基調講演が約1時間ありました。
 講演は、日本における公衆浴場の歴史的成り立ちや、世界各国に見る公衆浴場のお話から、都市施設や都市景観としての公衆浴場のお話など多岐に渡りました。
 お話の内容は銭湯でしたが、現代の日本の抱える精神的な閉塞感や脆弱化した日本社会を危惧されており、その再生の切り口として公衆浴場とその文化を再認識してみましょうという内容でした。
 ちなみに、金坂教授の実家は大阪で銭湯をされていたそうです。

続いて小休止を挟み、パネルディスカッションが1時間半ほどありました。
最初に各パネラーが「私と銭湯の関わり」について語られました。

町田氏

24年で2000軒以上を回った。
きっかけは外国人の友人に、宮造りの銭湯が何故お寺の形をしているのか説明できなかったことから。

鵜飼氏

大衆演劇一座について旅をするときは、駅前旅館に泊まり、食堂で定食を食べ、銭湯に入る。

小中氏

昭和40年頃の銭湯が最盛期だった時期には、京都府に約600軒の銭湯があった。それが現在は280 軒という現状。
山科湯のご主人です。

次の話題は「銭湯の魅力について」でした。
個人的には、この話題が一番面白く感じました。

町田氏

「浮き世の垢を洗い流す」といういい方で、体をきれいにするという目的以外にリラックスの場であり、非日常空間の場であり、視覚的遊びを楽しめると語っておられました。

鵜飼氏

変な意味ではなく同性の裸を見る場として捉え、みんなが同じでみんなが違うことを認識できる。

大場氏

京都は日本で一番銭湯が残っている町といっても過言ではない。
錦湯の事例を挙げ、地域に根付いた多目的利用の可能性を秘めている施設だ。

ムンジオリ氏 

地域の人との出会いの場、地域に溶け込む場である。

小中氏

42℃の定温の保っている点や湯量の多さ、マイナスイオンが多いなど家庭風呂より温まる。

次に水環境と公衆浴場について

鵜飼氏

見る見られる関係の中で水に対する理解が深まる。
水との付き合い方が分かるようになる。

大場氏

歴史的事例として水事情の悪い滋賀県長浜を例に、内風呂と銭湯の共生は可能で銭湯の衰退はかならずしも内風呂の普及のせいではない。

町田氏

排水の余熱利用などもともと水環境に優しい施設である。

小中氏

現在約8割の銭湯が地下水利用である。
一人当たりの水使用量を概算しても銭湯の方が家庭より少ない。

最後に課題と今後の銭湯に望むこと

大場氏

京都は洋館型、町家型、唐破風造りなど伝統的なものが多く残っている。
観光客も街中を見たり体験したいニーズが増えてきた。
文化施設としての銭湯を情報発信すべき。

町田氏

積極的なPRが必要。
空き時間(開店前)の多目的利用。

鵜飼氏

集客施設として再生を。
都市計画に銭湯を組み込んでいってはどうか。

ムンジオリ氏

若い人を惹きつける施設にしょう。

小中氏

スーパー銭湯が昨年は5施設オープン。共存共栄を計る。
お年寄りの健康チェックなど福祉、健康の施設として利用を考える。
子供の利用促進。

最後は時間切れで、十分に今後の再生策についての話がなかった点が残念でした。
最後質疑応答の中で、ある銭湯経営者の方が地域の子供に毎年無料招待券を配布している取り組みについて報告されました。
700枚ほど配られるらしいですが、利用するのは25%程度だそうです。

さてさて、概要はだいぶはしょりましたがこの辺にして、入浴記ならぬフォーラム入場記をどうぞ。


第三回世界水フォーラム分科会 入場記 

 会場の京都国際会館までは地下鉄です。私の通った高校はこの国際会館駅からすぐですが、当時はもちろん地下鉄はここまで来てませんでした。北大路バスターミナルからえっちら、おっちらバスでした。便利になったもんです。
 会場の入場にはまず登録をしなければなりません。会場横に設置された大きなテントの中で登録です。この登録料が一日参加で8千円です。高い!高すぎる!まあ入場してしまえば、いくつ分科会に出てもいいんですが、この日は閣僚会議もはじまり一般人の入れるエリアが制限されていて、もちろんテレビで見るメインホールには入れません。でも高い理由もちょっと分かりました。飛行機に乗るみたいなセキュリティーなど運営にかなり掛かっているのと、北山のコンサートホールである歓迎レセプションへの参加が無料になっています。また、バスや地下鉄の一日乗車券ももらえます。
 会場内はさすが国際会議だけあって肌の色も話す言葉も様々です。一応見れるエリアはひとまわりして分科会の会場へ行きました。会場前にはコーヒーのセルフサービスコーナーなんかもありました。また、京都の水道水をつめた災害備蓄用の缶をひやしておねーさんが配ってました。5カ国語ぐらいで缶の横に飲料水と書かれているのですが、水道水とは日本語でしか書かれていません。いくら冷やしてあるとは言え、水道を飲む気はあまりしません。
 分科会の会場入口には、暖簾やパネルの展示がされていましたが、意外なものを発見!京都府の浴場マップです。組合が作ったちゃんと本みたいになったもので、各支部ごとに分かりやすい地図も付いています。廃業銭湯の掲載状況から多分2年ぐらい前に作製されたものだと思います。もちろん一冊頂いてきました。
 会場は定員120人ぐらいでしょうか、最終的に参加していたのは半分の60人ぐらいだと思います。各イスには同時通訳のイヤホンも設置されていました。
ムンジオリさんは、母国語の英語で話されるということで必要不可欠なアイテムです。ただし内容が外国人の方にはなじまないこともあり、最初数人おられた外国の方は中座される方がほとんどでした。外国の方は、OHPでスクリーンに映し出される暖簾や建物に興味があるようで、そういうシーンを写真に収めておられました。場内の写真も撮影可能だったんですが、私はカメラを持って行っておらずちょっと後悔です。
 分科会の方は、上で紹介した様に進行した次第です。

 さて、ここからが私の感想ならびに意見です。
 この分科会の趣旨は、地域コミュニティーの拠点として社会的役割を果たしてきた銭湯の機能を再評価し、再生につなげようというものですが、最後の課題と今後の部分が時間切れで十分な意見が聞けず残念でした。でも、大まかに分けて2つの方向性が示されたと思います。
 ひとつは地域に根付いた施設として、イベントを行ったり、お年寄りの健康チェックを行ったりと日常の場としての再生です。
 もう一つは観光客など遠方からのお客さんに対して、銭湯を体験してもらったり、景観を楽しんでもらうという非日常の場としての再生です。
 どちらにおいてもパネラーの方が指摘されていたように、銭湯という場のPRは不可欠だと思います。そして何より、まず足を運んでもらうことが重要です。そして、そこで「また来たい」と思ってもらうことが一番大事です。
 日常の場としての再生は、福祉入浴や地域のフリーマーケットのような形で個々の浴場の努力でされている事例もあります。しかし、理想として地域コミュニティーとしての再生は最終目標ですが、現状において個々の浴場単位ではPRに限界もありますし、なかなか経営の安定化には結びついてないのではないでしょうか。
 それならば、広く銭湯文化を知ってもらい、関心を持ってもらい、足を運んでもらうことが、最終的に地域コミュニティーとしての再生に繋がる王道ではないでしょうか。
 幸いにも京都という土地は、年間3千万人もの観光客が訪れる観光都市です。さらに市内には多くの銭湯が今なお残る数少ない都市です。銭湯文化を発信する条件としては非常に恵まれていると思います。
 その為の施策をいくつか考えましたので書いておきます。

●京都を訪れる修学旅行生に銭湯を体験してもらう。
 そのためには、浴場組合から旅行会社に対し、京都が銭湯文化の残る貴重な町だということをアピールする。また、体験入浴と合わせ実際に浴場の方にお話を聞ける様な場所をコーディネートする。
 地元に帰り地元の銭湯にも行ってもらえたら大成功。子供にタイミング良くきっかけを与えてあげることが重要。

●ユースホステルと提携する。
 ユースは特に若者や外国人のお客さんが多く利用します。その方々に京都の銭湯を体験してもらう。
 京都には現在3軒のユースがありますが、そこに銭湯マップとスタンプラリーの台紙を置き1年以内に5軒入浴した方には抽選で何か差し上げる。
 ユースの旅では口コミが重要な情報源となるので、料金案内やゆず湯などの企画もののポスターなども貼ってもらう。
 フロントで回数券販売(ばら売り)をしてもらう。

●組合ホームページの充実
 現在でも組合のホームページはありますが、もっと交流の場として活用する。
 具体的には、現在「ご意見・ご要望」のコーナーが掲示板だと気づかないので「掲示板」に改める。
 体験学習等でアクセスしてくる小中学生に対応出来るよう内容を充実させる。
 浴場組合発行のポスター、マップなど印刷物には必ずアドレスを入れる。
 ホームページを持っている浴場のページとリンクする。(一部の浴場の利益になるからダメという考えは、お客さんに不利益をもたらす)
 このページもリンクしてもらえたら嬉しいんですけど(笑)。

●26の日の見直し。
 現在26の日は子供がタダになりますが、これを子供同伴なら大人も子供料金にする。
 この方が、子供は「タダやから連れてって」ではなく「私と行ったら安なんで」と保護者をさそいやすい。
 大人も自分の料金が子供料金になることで、童心に返ったような気になりうれしい。(と思うのはわたしだけか?)

 追記になりますが、銭湯を観光資源として京都の観光産業と結びつけることは、行政の力を借り、資金面でも優遇される可能性があると言うことです。
 京都市は、観光産業を21世紀の基幹産業にしようと考えています。そこで京都独自の銭湯文化を行政にアピールすれば道は付くとおもうんですけどね。

 いろいろ書きましたけど、そんなことはもっとしかるべき所に言いなさいと思われるかも知れませんね。ごもっともなご意見です。
 でも、まあ銭湯好きのたわごととして流してください。もちろんこんなんはどう?っていう名案や意見があればメール、BBSにお寄せ下さい。
 あっ!それからこのサイトの趣旨は銭湯文化のある時代に生きて良かった〜。みんなで楽しみましょう!というということですので、肩肘張らずにお気楽に。

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